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【書評】「弱者救済」の幻影―福祉に構造改革を

障害者の中で一番すごいと思う人は、麻原彰晃。なぜなら、彼が障害者であるということを誰も意識していないから。
そう言ったことがあった。たしか、1993年のことだと思う。
今にして思えば、説明不足で奇を衒った感のある青い発言だが、その頃に言わんとした所は、今も基本的に変わっていない。

【書評】「弱者救済」の幻影―福祉に構造改革を_d0140653_372854.jpg自分で表現できないことを人の力を借りて表現するようだが、政治学者の櫻田淳氏は、(氏は脳性まひの重度身体障害者である)著書「『弱者救済』の幻影―福祉に構造改革を」の中でこう書いている。

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この国では、障害を持つ人々が「障害者」の立場に寄り掛かる限りは、誰でも一冊の書を出すことができる。この国の大多数を占める障害を持たない人々にとっては、障害を持つ人々の日常とは、なかなか理解の及ばない「異界」として意識されているようなところがある。障害を持つ人々が日常の生活経験に引き付けて何かを語れば、それは、障害を持たない人々にとっては、「異界からの通信」を意味する。毎年、数冊は必ず出版されている「障害者本」の価値は、紛れもなく「異界からの通信」としての価値なのである。

私が関心を持つのは、「社会的な存在」としての乙武氏が、どのような「業績」を具体的に世に示し得るのかということでしかない。もし、乙武氏がスポーツ・ジャーナリズムの世界に身を置く人物として、我が国のスポーツ・ジャーナリズム史上、伝説的作品と称される「江夏の二十一球」を手掛けた故・山際淳司氏‥のような域に達しようと目指しているのであれば、その選択それ自体には、なんら云々すべきことはない。私は、スポーツ・ジャーナリズムの世界で確かな位置を占める「業績」なり「作品」なりを乙武氏が世に示すのを待つだけである。私は、「障害にもかかわらず、頑張った‥‥」という類の言葉には、一切の信を置いていない。

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この言葉を地で行く、あえて険しい道を選ぶ櫻田氏の生き方に敬意を表したい。
が、マジョリティーからの共感を得ることはできないかも知れないとも思う。

ちなみに、つい先日、櫻田氏は、3年半近く書いていたBlog「雪斎の随想録」の終了を宣言された。

by yokohama_nakame | 2008-04-26 03:11 | 雑感  

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